1. 線虫を対象として、クチクラ構造からその生き様を探っています

  • 線虫(線形動物門)は土壌、深海から生物体内まで、およそ生物が生存できる環境には必ず生息していると言われています。彼らは線形のシンプルなボディプランをしていますが、いかにしてそれほどまでの適応能力を獲得できたのでしょうか?
  • 線虫を覆い、環境から保護しているのはクチクラです。クチクラ層の内部構造は、種間だけでなく、種内でも大きく異なっていることが知られています。

「線虫はクチクラ内部構造をダイナミックに変化させることで、様々な環境に適応してきたのではないか?」

 

という仮説のもとで研究を行っています。詳しい内容は少しずつ公開していく予定です。

(1) 昆虫便乗種から寄生種への派生に伴うクチクラ構造の変化

自分自身では運動性が低く乾燥に弱いことから、線虫種の多くは他の生き物、例えば昆虫を乗り物として利用します(昆虫便乗種)。そしてその中から昆虫に寄生する種(昆虫寄生種)が進化してきたといわれています。僕たちは、昆虫便乗種から寄生種が派生している分類群 (Parasitaphelenchinae亜科) を対象としてクチクラ構造の比較を行いました。その結果、昆虫寄生種のみに特異的なクチクラ構造、すなわちクチクラ基底層に存在する縞状の構造が消失、が確認できました(左図。スケールバーは200 nm)。

 

この縞状構造は強固なタンパクで構成されているとされ、現段階の知見に基づくと、この変化は運動性がなくなったことを反映していると考えられます(いわば筋肉やそれを支える骨が弱くなってしまったような)。さらには、この縞状構造をなくすことで、クチクラを介した宿主からの栄養吸収や寄生虫によく見られる巨大化が可能になっているのかもしれません。詳細はこちら

2. 線虫の外部認識機構の理解

植物寄生性線虫の脳のTEM像

(建設中)

以下のサイトを参照ください

https://miraibook.jp/researcher/sa23008