自分自身では運動性が低く乾燥に弱いことから、線虫種の多くは他の生き物、例えば昆虫を乗り物として利用します(昆虫便乗種)。そしてその中から昆虫に寄生する種(昆虫寄生種)が進化してきたといわれています。僕たちは、昆虫便乗種から寄生種が派生している分類群 (Parasitaphelenchinae亜科)
を対象としてクチクラ構造の比較を行いました。その結果、昆虫寄生種のみに特異的なクチクラ構造、すなわちクチクラ基底層に存在する縞状の構造が消失、が確認できました(左図。スケールバーは200 nm)。
この縞状構造は強固なタンパクで構成されているとされ、現段階の知見に基づくと、この変化は運動性がなくなったことを反映していると考えられます(いわば筋肉やそれを支える骨が弱くなってしまったような)。さらには、この縞状構造をなくすことで、クチクラを介した宿主からの栄養吸収や寄生虫によく見られる巨大化が可能になっているのかもしれません。詳細はこちら。